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2019年 09月 25日 ( 1 )

 万葉集に次の一首がある。
 
  草に寄する

 野の辺の 尾花の下の 思ひ草 今さらさらに 何か思はむ  作者不詳 巻10

 (道ばたの 尾花の陰の 思い草のように いまさら 何を思い迷いましょうか。)

 この「思ひ草」は、秋の相聞に分類され、かつ、尾花が下とあることから、すすきの根に寄生し秋に花が咲く、ハマウツボ科のナンバンキセルを指すのだという。

 そのナンバンキセルに、森林公園で出会った。

 今日のことだ、久々の森歩き、秋晴れ、気持ちよい風、申し分がない、いい気分だった。

 場所は疎林帯の縁であった。

 どうやら、薄を綺麗に刈り取った後らしく、思い草は剝き出しにされて、そこにあった。

 
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葉は退化し、茎の先端についた円筒形の花が、下向きについている。

すでに、花の盛りは過ぎたらしくしなびたような感じがする。

「思ひ草」と万葉人がこの草を呼ぶのは、まるで花の部位が頭を垂れたというより、うなだれているかのような、この花の姿からだろうか。


以前、薄の根元にまったく目立つことなく生えていたナンバンキセルを見たことがある。

まことにひっそりと花をつける草であった。

見つけても、よくよく見るには、地面に頬をつけるくらいに、視線を下げなければならなかった。


ところで、「思ひ草」が詠まれているのは、万葉集中この一首のみだ。

ボクは、誰も気にとめそうもないこの草に「思ひ草」と命名したのは、この「よみ人知らず」クンであったのでないかと、想像している。

多分、いそがしい毎日で、こんな地味な植物に関心を持つものが沢山いたとは、ボクには到底思えない。

この花に関心を持って、さらに歌に詠んだ、そうまでするなんて、そうとうな変わり者ではないかと。

この歌の出来は不問にするが、「思ひ草、はて?なんじゃい、そんな花あったか?」と当時の人たちも思ったかも知れない、とか。









by ribondou55 | 2019-09-25 23:21 | この一首その一句 | Trackback | Comments(0)

水面を滑りまわって世を過ごし、その上、空を飛ぶ羽も持っているあめんぼは、老蛙の憧れだ。


by 泡六堂