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「びんた」の味なんて知らない(その四)//映画「真空地帯」と、「兵隊やくざ」シリーズ

 
 野間宏は、今のぼくには親鸞に傾倒しつくした作家としての在り方の方が親しいのだが、「真空地帯」は10代後半か20代前半であった頃のぼくには、重い印象がある作品である。
 旧日本帝国陸軍は、父が属した軍隊である。

 父は輜重輸卒である。

 もともと体の弱い人であったらしく、徴兵検査で甲種でなく第一乙種に選別された。輜重輸卒というのは、「仕事は馬の口とりと、荷車押しだから、軍事教育も不要である。階級も二等兵のままで、進級はない。」兵士?であった。つまり苦力である。身体脆弱なものばかり、又は年齢の高い者ばかりが、輸卒となった。しかし、軍事物資輸送の後方支援を軽視したという帝国軍は、このことによってのちのち大きな禍根を残すのだが、そんことより、我が父は馬の糞にまみれ、やがて肋膜炎の侵されて、傷病兵となって帰還したのだ。

 その父が、語らぬ軍隊というものの一端を「真空地帯」教えてくれた。
 内務班と呼ばれる古年次の兵の専横が跋扈する馬鹿げた暴力装置は、天皇の御名によって統率されたのであった。
 あの父も初年たりしころ繰り返し《びんた》されていたのだろうか。

 実をいえば、映画によって日本帝国軍についてぼくに教えてくれたのは、映画「真空地帯」の啓蒙性とはえらく趣を異にした、勝新の「兵隊やくざ」シリーズであった。おそらくは、くそばかばかしい学校をさぼってばかりいた高校生の頃、午後三時ころからはじまる日本映画の放映を飽きることなく観ていたが、そこで大宮貴三郎を知ったのである。監督、増村保造 ・原作、有馬頼義 ・脚色 、菊島隆三 撮影 、小林節雄 という、豪華なスタッフからなるこのシリーズは、ぼくに言わせれば、おおいなる反戦映画であった。
 実をいえば、映画「真空地帯」の下村勉演じる元中学校教師會田一等兵が嫌いなのだ。嘘くさいのだ。
 つまりね。山本作品はそう意味で全部嫌いなのだ。
 (つづく)
 
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  今日で休暇は終わりだ。

   大豆咲く低気圧往き夕されば    李凡堂
 
 
 
 

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by ribondou55 | 2005-08-17 01:10 | 還暦シネマ | Trackback | Comments(0)

水面を滑りまわって世を過ごし、その上、空を飛ぶ羽も持っているあめんぼは、老蛙の憧れだ。


by 泡六堂