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「びんた」の味なんて知らない(その三)//映画「父とくらせば」

  


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  父と暮らせば

  製作:衛星劇場/バンダイビジュアル/日本スカイウェイ/テレビ東京メディアネット
      葵プロモーション/パル企画
         2004/カラー/35mm/100分/ビスタサイズ
    原作・・・・井上ひさし「父と暮せば」(新潮社刊)
    監督・・・・黒木和雄
    脚本・・・・黒木和雄/池田眞也
    出演・・・・宮沢りえ・原田芳雄・浅野忠信

 こまつ座がどのような演劇に仕立てているか、観たことがないので知らない。
 が、初演から一〇年たったこの芝居は、すでに練りに練られた作品となっているだろう。
 この映画がその演劇から受け継いだこと、そぎ取ったこと、新しく付け加えたこと、は、あるのか、ないのか。
  映画は、当然演劇的な構成になっている。
  むしろ、劇中で原田芳雄演ずる父竹造は、被爆の悲惨を語る語り部の翁となる劇中劇を演ずる。演劇を出自とする映画であることを証しているのだ。

  宮沢りえはとても美しく、美津江のはかなげな肉体が放射線に侵され、原爆症に脅かされているのか、と思うだけで心は痛む。生きの残ったことを負い目として目立たぬように暮らす美津江。その美津江の恋の成就を願って、現れた父、竹造の幽霊。娘の恋の応援団・・父竹造の娘への愛情のこまやかなこと。原田芳雄の演技の味わいのよさ。

  どこに不満がある。
  でも、ちょっと不満。

  これは、美しい物語である。
  美津江が再び生きてゆく、
  生き残ったことを幸いとして。

  観るものは、感動し、安心し、
  ひねくれ者は、ちょっとしらける。
  それで、終わり。
  これまでよく観、聴きした、一連のお話の一つ。
  とても、上等の。

  それに、生き残ったことへの負い目。 
  生きるにあたいする友人は死んだのに、なぜ自分が。
  まだ生きていた父を置き去りにして、生き延びた自分が許せない。
  よくある、きまじめな戦争体験談の一つの典型。
  
  「生き恥をさらす」という薄汚い意味ではないことはわかるが、、
  その手の類話が 
  ぼくのどこかのびっしょりと濡れた倫理的な美意識のようなものを、
  そこを刺激してきて
  それがイヤだ。
  (続く)
  

      
  

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by ribondou55 | 2005-08-15 01:15 | 還暦シネマ | Trackback | Comments(0)

水面を滑りまわって世を過ごし、その上、空を飛ぶ羽も持っているあめんぼは、老蛙の憧れだ。


by 泡六堂