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『サウルの息子』を目撃した。

 『サウルの息子』(監督・ネメシュ・ラースロー、2015年)を観た。

 2015年・第68回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したハンガリー映画。アウシュビッツ解放70周年を記念して製作され、強制収容所で死体処理に従事するユダヤ人のサウルが、息子の遺体を見つけ、ユダヤ教の教義に基づき葬ろうとする姿や、大量殺戮が行われていた収容所の実態を描いた。1944年10月、アウシュビッツ=ビルケナウ収容所。ナチスにより、同胞であるユダヤ人の死体処理を行う特殊部隊ゾンダーコマンドに選抜されたハンガリー系ユダヤ人のサウル。ある日、ガス室で生き残った息子と思しき少年を発見したものの、少年はすぐにナチスによって処刑されてしまう。サウルは少年の遺体をなんとかして手厚く葬ろうとするが……。ハンガリーの名匠タル・ベーラに師事したネメシュ・ラースロー監督の長編デビュー作。 映画comより拝借

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 1944年10月の出来ことは,次のようなことであったという。

  1944年10月7日   アウシュビッツでのゾンダーコマンドの蜂起
 1944年の夏、アウシュビッツのガス室の使用は、44万人を超えるハンガリー系ユダヤ人の到着により増大します。この虐殺場所で働く囚人の特殊別働隊(ゾンダーコマンド)が増員され、ガス室での大量虐殺に対処しています。しかし、1944年の秋までに、この特殊別働隊の人数が再び減少します。ゾンダーコマンドの囚人は、自分たちも殺害されることを恐れ、反乱を起こし、逃亡することを計画します。この反乱の計画では、女性囚人の協力もあり、ゾンダーコマンドの囚人のため近くの工場の火薬を密かに入手します。1944年10月7日、ゾンダーコマンドの囚人たちは蜂起し、遺体焼却炉IVを爆破すると共に、親衛隊の護衛兵を何名か殺害します。この反乱は、収容所護衛兵によってすぐに鎮圧されます。ゾンダーコマンドの囚人は全員殺害されます。工場の火薬をゾンダーコマンドに提供した4人の女性は、収容所が解放される数週間前の1945年1月6日に縛り首にされます。 〈「ホロコースト:学生のための教育サイト」参照)


 『サウルの息子』は、この10月7日の蜂起とその前日6日の2日間に、サウルというひとりの男がどのように生きたか、そして,死んだかということを映し出す。

 カメラは,執拗にサウルひとりをクローズアップし続ける。

 ガス室で生き残りながらも、直ちに殺されてしまった少年を当たり前に葬るためラビを探しだし、埋葬しようと懸命に、あるいは、まるで憑かれたように、動き回る。

 もはや、蜂起にかかわる任務すら,彼にとっては最重要ではなくなる。

 カメラは、焦点を彼ひとりに当てて、はてしなく追いかける。

 裸にされ、ガス室に送り込まれ、焼かれてゆく人々の姿と,その殺戮に荷担させられているゾンダーコマンドの姿も、焦点からずれっぱなし、どこまでもボケてはっきりしない、ただあわただしい虐殺工場の躁音だけが鮮明である。

 まことにストイックな映像である。

 映し出すのは、サウルの「意思」そのもののようだ。

 死んだ少年をサウルは、自分の息子であると云うが、それが事実であるのかどうは、最期まで分からない。

 云うまでなく、それが事実であろうと、サウルの空想的な思い込みであろうと、どうでもかまわない。

 『息子』は、ただしくふるさとハンガリーのユダヤ人として葬られなければならないと、サウルは確信している。

 それだけのことである。

 人を「部品」とよんで処理する者等に対抗するには、人を『人』として悼み、祈り、土に返すという不変であるべき振る舞いを貫くこと、・・・・サウルの確信であろう。

 ボクラもサウルの息子を見たのだ。

 
 この作品は、ハンガリーから発信されている、日本からはどうか?

 さしあたりは、塚本監督の『野火』であろうか。




 

 

 
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by ribondou55 | 2016-02-25 23:23 | 還暦シネマ | Trackback | Comments(0)

花より団子、団子より昼寝がよろしい「隠居蛙」の日常をポロリ。誤字誤記多し、恐縮。


by 泡六堂
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