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『恋人たち』

 『恋人たち』(監督・橋口亮輔、2015年)を観たのは、1週間ほど前になる。

 
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 ボクは、耄碌が益々進行中で、大体、週単位どころか、数日の間に大抵のことは忘れてゆく。

 この愚録は、そのための備忘録の役割が大なのであるが、『恋人たち』で観たいくつかのシーンは、まだ頭に残っている。

 ボクが今年観てきた映画・テレビ番組を通して、主観的に云うと、五本の指に入る、その中でもちょっと際だっている。

 三組のカップルが登場する。

 カップルと云っても、片思いばかりである。

 その片思いは、まことに純情である。

 一組目は、まったくの不慮、通り魔に刺殺された妻と取り残された夫。

 二組目は、平凡なパートタイマーの人妻と覚醒剤中毒で行き場のない中年男。

 三組目は、同性愛の弁護士と今は妻子持ちの友人。

 「残された夫」が、「パートタイマーの人妻」が、「同性愛の弁護士」が、それぞれの相手を求めてゆく。

 云うまでもなく、はじめから成り立ちようもない設定であって、徹底的に不可能で、不毛な「恋」である。

 いったいに「恋人たち」とは、酷く悲しくふざけきった題名なのだ。

 いづれにしろ、この三組のカップルを着想した監督は、たいしたものだ。

 不条理が大手を振って世間をまかり通る、一寸先は闇、それでいて、堅実な日常の反復のたまらさ、人間関係の根底でとぐろを巻く疑心暗鬼、裏切り、不信、退屈、とかなにやかやを、この三組の恋人から堪らないほどに見せつけてくれる。

 まさしく「それでも人は生きてゆく」、それが「今」の様相だ。

 では、片思いする三人が、いったい何を相手に求めていたのか。

 それは、自分という存在をありのままに受け入れてもらうこと、人は他者に受け入れられることなしに、自分を持ちこたえられないらしい。

 しかるに、そこがむずかしい。

 絆なんて、うさんくさい単語では表現できない、ボクの感じでは、もやっとしていて、優しげに暖かい感情で共感し合うというような相互認知って、ところかな。

 この作品、キャストが全員すばらしい。

 なかでも篠原篤、成嶋瞳子、この二人は、すごかった。

 最期のシーン、篠塚アツシのマンションの一室、やわらかな光が満ちて、小さな骨壺とそこに供えられたクリーム色のチューリップ、美しかった。





 

 



 

 
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by ribondou55 | 2015-12-13 21:01 | 還暦シネマ | Trackback | Comments(0)

花より団子、団子より昼寝がよろしい「隠居蛙」の日常をポロリ。誤字誤記多し、恐縮。


by 泡六堂
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