一日、解放されて、『千年の愉楽』を観る

 山田の春祭を見にゆこうかと寝床の中では思っていたが、朝飯を食べていると、秩父までの運転が面倒になってきた。

 そんなであったら、高崎で『千年の愉楽』が上映されていることを思い出した。


 高崎までの車中、窓の外が土色に煙っている。

 北関東に住んでいれば、冬の強い季節風が田畑の乾いた砂埃を巻き上げて、辺り一面を砂嵐のように視界を遮ることがあることを知っている。

 だが、そんな風には思い当たらず、JRも最近はつまらん合理化で車両の窓ガラスさえきれいに洗えないかと、そんな感じで眺めていた。

 高崎駅におりて、駅の北側のヤマダ電機前の陸橋上にでると、ビルの間から体を押し返すような勢いで風が吹きつけてきた。それに、奇妙に暖かい。

 いやな感じだ。

 「最終決算」「最終決算」の看板文字が店内におどっている。購買意欲を刺激することに躍起となった店員が右往左往している、そんなヤマダを一巡りして、どこかで昼飯でも食っておこうと、駅の南側に回ると、今度は、ぴしぴしと砂粒混じりの風が顔面を打ってきた。カラカラに乾いた強風が髪をなぶる。

 空は、土色の雲が太陽の光を遮り、薄暗い。

 枯れ木のような街路樹がぶるぶるぶると震えながら、大きく揺れている。

 飲み屋の鉄製の看板がひっくり返っている。

 その上、暗い灰色の雲も足早に流れてきて、時折、ぱらぱらと雨粒が顔を打つ。

 車いすの青年が、信号前で立ち往生している。

 土砂は目にも喉にも侵入しそうだ。仕方ないのでローソンでマスクを買った。

 もしかして「黄砂」って奴、と思ったからだが、いやいやこれは、地元の土埃、電車の中で見たあれだと、とりあえず避難しようと飛び込んだ「すき屋」の並盛りを食いながら、・・・・・やれやれというわけであった。


 『千年の愉楽』《2013年)は若松孝二監督の遺作となった作品であるから、観ないわけにはいかないだろう。

 まして、中上健次を若松が、である。


 ひとつ、果たして寺島しのぶの「オリョウのおばあ」でよかったのかとも、・・・・・、でも、やっぱり、若松作品では寺島しのぶさんですな、とも。

 いまひとつ、奄美の中村瑞希さんを起用したのはとてもよかったと思う。監督のアイデアが効いている。

 それに、本編を観た上でゆーちゅーぶの予告編を観たら、これがとてもいい。オリョウも、中本の男たちも美しい。

 もう遠い昔読んだ作品のことは忘れている、書棚から探し出すのも面倒だ。

 

 映画館を出たら、穏やかに晴れていた。

 今日は、3月10日である。

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by ribondou55 | 2013-03-11 00:56 | 還暦シネマ | Comments(0)

花より団子、団子より昼寝がよろしい「隠居蛙」の日常をポロリ。


by 泡六堂
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