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行田・熊谷の名物「フライ」焼きは冷めないうちに。

 先ずは梅コンガラセイタカお豆だか  (文化十三年・二月)  一茶

 「梅」が咲くと一度は声にしてみる一句。

 岩波文庫「七番日記」では、金伽羅童子、制吒迦童子、とあり、「お豆だか」はお元気か、お達者かと。

 コンガラ・セイタカは不動明王の脇士だそうだ。

 軽口のようで、いい。

 そういうわけで、我が家の梅も咲き出した。

 今日は日中で10度になった。

 畑にも出たが、マフラーが余計に感じられた。

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 畑から帰ると昼時であった。

 配偶者がフライを買ってきた、これが昼飯だという。

 
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 フライの発祥は、Wikiにはこんなふうに。

 通常は小麦粉を水で溶いただけの物だが、長葱を入れる場合もあった。ソースではなく醤油を塗って味付けをし、生地に砂糖を入れてホットケーキのようにすることもあった。「フライ」の命名者は行田市天満の古沢商店の初代店主といわれている。1925年(大正14年)に近くの足袋工場で働く女性工員に、休憩時のおやつとして出し始めたのがきっかけとされ、当時はフライ焼きと呼ばれていた。手ごろな値段で手軽に食べられて、なおかつ腹持ちがよいことからファーストフードとして親しまれ、多くはこれら女工たちの手を経て地元家庭や市内飲食店に広まって行ったとされる。後に「フライ焼き」から「フライ」へと名前が省略された。なお、行田市の足袋工業の発展と共に広まっていったことから、布が来ると書いて「布来(フライ)」、足袋工業の発展が富をもたらしたとして、富が来ると書いて「富来(フライ)」などと当て字をすることがある。

 この行田発祥が、近頃の定説のようだ。この記述によるとちょっとモダンな食べものめくが、そんなことはない。今日食べたフライはS商店のものだが、溶き小麦粉に長ネギをきざんでどっさり、乾物の切りイカ、豚肉の味付け小片などが混入された生地が、鉄板で焼かれ、その上にソースがたっぷりと塗ってある。直径30センチ弱の円形のものが、半分にたたまれて半円形になっている。その内側に濃くソースが塗られているのが昔ながらのスタイルのように思える。どう見ても外見も味も素朴な食べ物である。葱は深谷が有名だが、行田熊谷だってたくさんできる。

 この地方はもともとが麦が盛んに生産された土地で、一年の内に麦刈りと稲刈りが行われる地方である。少し前まで夕飯は毎日手打ちうどんという家も少なくなったという。正月元旦の朝も餅の雑煮でなく、うどんという慣習もあったときく。手打ちうどんをこの地方では「テブチ」と云い、うどんは「メンコ」と呼ぶのだ。

 手元にある「聞き書 埼玉の食事」(農文協)をぱらぱらと見てみた。埼玉の日常食は押し麦に白米を混ぜた麦飯が一般的で、時折品変わりとして、煮込みうどんやすいとんのような小麦粉利用が行われ、晴れの日の食事にも小麦粉由来の食べ物が饗されていたそうだ。「朝まんじゅう、昼うどん」これが夏の晴れの日のごちそうであったそうだ。つでにいうと、煮込みうどんを「おっ切り込み」というが、「にぼうと」とよばれるきしめんに似た扁平な幅広うどんの煮込みもある。
 
 そこで、フライに近いものはということで、もう少しページをめくると、行田ではなく秩父地方のこじょうはん(午後の間食)に食べられたたらし焼きというものがあった。「小麦粉に、葱を細かく刻んだものと味噌と水を入れて、少し固めに溶き、暖めたほうろくにおたま一杯ほど流し込む。両面を焼いてできあがる。田植えや普段のこじょうはんに食べる。」とある。

 でも、たらし焼きは具材こそ葱中心でフライと同様ではあっても、味付けが味噌である。ソースではない。たぶん焼くのにほうろくであるから油もひかないだろう。やはり、ソースが眼目だと思う。ソースというのが、いかにも「近代的」だ。それにたび工場の女工さんとうのも近代だな。家内工業ではなく、たび工場の労働はちょっときつかったろうな、行田にはたび工場の「博物館」がある。以前、ポタリングの途中見学したコトがある。足袋というのは複雑な工程を経てできるものだと、感心した記憶がある。

 で、女工さんと聞くと、すぐに「女工哀史」を連想するのが、ボクラの世代だ。そういえば、熊谷にもかつて富岡の製糸工場の流れをくむ、大きな製糸紡績工場が町の中心街に二カ所あった。そのうちの一つ石原製糸所は、1907年から1994年に至る長い歴史を刻んでいる。もしかすると、そこに働いた女工さんたちもささやかな贅沢としてフライを食したかも知れないなあと、ここまで書いてきて思った。フライは、そういうわけでまさしく、「近代」の食べ物であったのかも知れない。そういえば、秩父は養蚕の盛んな地帯でもあったのだ。フライという食い物はそういうわけでとても庶民的なものだが、なにやらうら悲しい感じがあり、そしてちょっと暖かな食べものでもある、そんな感じがこれまでもあったが、それは、遠い遠いところから連れてこられた女工さんたちの涙の味が混じるせいかと、今ふと思った。

 ともあれ、フライは熱いうち食べるのが一番。冷えたフライは、いただけない。




 
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by ribondou55 | 2013-02-21 00:05 | よしなしごとあれこれ | Trackback | Comments(0)

花より団子、団子より昼寝がよろしい「隠居蛙」の日常をポロリ。誤字誤記多し、恐縮。


by 泡六堂